河北新報:市民らがホームレス支援 人との絆深め自立促す 仙台
http://www.kahoku.co.jp/news/2011/02/20110219t15034.htm
路上で生活する人(右奥)に支援物資を手渡す「仙台夜まわりグループ」の活動。月2回の夜回りは12年目を迎えたが、今も多くの人が追い詰められた生活を送る=JR仙台駅前
カップ麺などを食べてゆっくり過ごす「七転び八起き会」(仮称)。休憩しながら、人とのつながりが感じられる場になってほしいと願う=仙台市青葉区の市福祉プラザ
長引く不況が影を落とす仙台の街で、市民グループなどによるホームレス支援が地道に続けられている。食料や衣類などを提供しながら、路上からの脱却を後押しする。自立の鍵を握るのは「絆」の再生だという。(報道部・成田浩二)
1月下旬、夜のJR仙台駅前。底冷えする空気の中、ホームレス支援のNPO法人「仙台夜まわりグループ」(若林区)の活動が行われた。
参加したのは学生や主婦、会社員らボランティア17人。手分けして、おにぎりやみそ汁、バナナ、毛布などの支援物資を抱え歩き出した。
付近の路上や広場、公園の片隅に、ひっそりと支援を待つ人たちがいた。多くは夜、毛布や寝袋にくるまって寝ている。
体調を気遣いながら物資を渡す。無言で頭を下げる人、笑顔を返す人。寒かったせいか、みそ汁を何杯もお代わりする人もいた。1時間半の夜回りで、63人のホームレスが確認された。
昨年1月の厚生労働省の調査で、仙台市内のホームレス数は108人と、ピーク時(2004年)の253人より大幅に減った。官民の支援で自立を果たした人は多い。
一方で、実態把握が難しい移動型ホームレスや、車やネットカフェを住まいにする「予備軍」も増加。市社会課は「雇用環境悪化で就労意欲のある若者の生活相談も増えている」と話す。
ホームレスは決して特別な存在ではない。
「行き場がない」と、夜まわりグループの炊き出しを受けた男性(57)。電話工事会社を昨年末に解雇された。妻とは離別、家もない。解雇された会社の事務所で寝起きするが、2月末での退去を迫られているという。
5年前に自動車工場の仕事を失った男性(34)は、時々日雇いの仕事をして24時間営業のファストフード店などで夜を過ごす。両親は他界した。「定職が欲しい。炊き出しがないと僕は飢え死にしている」と憂う。
「共通するのは信頼できる人間関係が切れていること」と、ホームレスの居宅支援などを行う市民グループ「ありとも」(若林区)の青木康弘代表(50)は指摘する。
「ハウスレス」でなく「ホームレス」。住む家だけでなく、支えてくれる家族や地域という「帰るべき場所」がない。
倒産、失業、多重債務…。つまずく理由はさまざまだ。人とつながっているうちは乗り越えられるが、相談相手もなく孤独に陥った時、行き場を失う。ホームレスが生まれる背景にあるのは「無縁社会」の闇だ。
「大事なのは人の絆なんです」。夜まわりグループのスタッフの男性(64)は実感を込める。元ホームレス。グループの支援で自立を果たし、支えられる側から支える側に回った。今、人の輪の中にいることが生きる力になっているという。
「炊き出しをしても根本解決にならないという冷ややかな見方もある。でも、粘り強い活動自体が『独りじゃない』というメッセージになると思う」と、夜まわりグループの今井誠二理事長(50)は信じる。
8日、同グループは新しい活動を始めた。福祉施設を借り、ホームレスに日中の居場所を提供する「七転び八起き会」(仮称)。わずかな時間だが、互いの悩みを共有する場にもなる。「何度失敗してもやり直せる社会に」。そんな願いを抱き、活動を続けている。
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仙台夜まわりグループはコメ、缶詰といった支援食料の提供を呼び掛けている。連絡先は同グループ 050(3364)7160(022)783-3123 。
〈河北新報 2011年02月19日土曜日夕刊一面〉
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