朝日新聞:ホームレスのいま(下) 助け求める声くみ取り
2011.3.9 朝日新聞宮城県版29面【宮城】
心通わせる活動こつこつと
炊き出しに並ぶホームレス=仙台市青葉区
NPO法人「仙台夜まわりグループ」が仙台市中心部の公園に着くと、ホームレスの男性5人が白い息を吐きながら待っていた。
「光のページェント」の電飾がまぶしい昨年12月の夜。ボランティアの一人、自営業の福田大樹さん(24)は、おにぎり2個とみそ汁、バナナを差し入れた。
東京・年越し派遣村のニュースをみた後、街で見たホームレスが気にかかり、昨春から参加。当初は「少し怖いイメージ」があったが、話してみるとリストラや失業で路上生活を余儀なくされる「普通の人」だった。「自分にも起こりうる」と感じている。
ホームレス支援は、こうした大勢のボランティアに支えられている。「夜まわり」を立ち上げたのは、尚絅学院大学の今井誠二准教授(50)。ドイツから仙台に移住した1997年、雪が降る真冬の街頭で毛布なしに段ボールだけで横になるホームレスは見慣れぬ光景だった。
「凍死しないだろうか」。通っていた教会で牧師の青木康弘さん(50)夫婦に相談し、週1回、安否確認に回ることにした。ある時、同じ場所に寝泊りする年配の男性が姿を消した。間もなく、心臓発作で亡くなっていたことを知った。「こんなことを繰り返してはいけない」
新聞の投書やインターネットで活動が紹介されて全国から衣類や食品が送られ、定期的に炊き出しもできるようになった。すると一人のホームレスに言われた。「寒い夜に温かいみそ汁は本当にありがたい。でも一瞬しかもたない。もっと先につなげられることをしてほしい」
詳しく聴くと、住民票がなければ生活保護を申請できず、就職活動も難しい。02年、仙台市内で12人が暮らせる「簡易住宅」の運営を始めた。住民登録から付き添い、これまで500人以上を路上生活から「卒業」させた。
行政も支援に力をいれる。仙台市は社会福祉法人「青葉福祉会」に委託し、ホームレス50人の住居を用意。3カ月で就職先を探すよう促す。開所した03年以降、17〜81歳の約300人が入所した。
ただ、支援団体の間では悩みも少なくない。「人間不信に陥ってしまっているせいで、自分から助けを求めない人も多い」。仙台市の支援団体「萌友」の芳賀ヒロ子代表(70)は言う。
県内の支援団体は連絡組織「仙台協友会」をつくり、月1回の会合で炊き出しや夜回りなど活動を調整している。月間予定はホームレスに配っている。
「一人ひとりと向かえば心を開くこともある。それまで待てば解決にもつなげられる」。芳賀さんたちは地道な活動を続けている。