読売新聞:県裁決 福島市の処分取り消し

2月 23rd, 2011

 軽自動車の所有を理由に、福島市が生活保護費の支給を打ち切ったのは不当として、2歳の女児を1人で養う同市のアルバイト女性(29)が県に行った審査請求について、県は、支給廃止処分を取り消す裁決を下した。県が支給廃止処分を取り消すのは珍しい。女性と、支援する弁護士らが21日、県庁で記者会見して明らかにした。

 生活保護法や厚生労働省通知では、障害がある場合などを除き、生活保護世帯の自動車所有を制限している。他県では保有が認められたケースもあり、今回の裁決では、処分の妥当性のほか、車保有の妥当性も焦点になっていた。

 女性は、幼少時のトラウマから、他人が運転する車に乗るとパニック状態になるため、生活の足として軽乗用車を所有。女児出産後にそううつ病を発症し、2009年8月から生活保護費を受給していたが、車は処分するよう再三指導を受け、昨年10月1日付で支給廃止処分となった。

 これを不当として女性が審査請求したもので、裁決は8日付。市は処分を決定時に遡って不支給分を支給する。

 裁決では、女性に対する市の指導について「丁寧な説明を行っていたとうかがえる記録は見当たらず、対応が十分であったとは言い難い」としたうえで、女性について「要保護性は極めて高い」と認定した。車の処分指導に関しては、自宅に近い別の医療機関を通院先にすることも可能とし、「直ちに違法とすることはできない」と判断した。

 支援する弁護士らは会見で、車による生活が一般的になっている実情を改めて指摘した上で、「車の処分指導の違法性が認められなかったのは残念だが、形式的な生活保護行政、機械的な処分指導の在り方に大きな影響をもたらす」と評価。女性は「今はとてもホッとしているが、希望の光が見えていけるように頑張っていきたい」と話した。

 一方、福島市地域福祉課は「裁決を真摯(しんし)に受け止め、今後の生活保護の指導に生かしたい」としている。

(2011年2月22日 読売新聞)